建物調査と事業再生計画が重要なわけ

スルガ銀行不正融資の調停で、被害者が示す「不正融資」については、銀行側はほぼ認めているようです。しかし不正融資にもとづく損害賠償を求めてもスルガ銀行はなかなか応じようとはしません。

理由は、損害賠償を求める側に、根拠がある賠償金額がしめされていないからではないでしょうか。損害賠償の金額は、かねてより金融庁が示している「事業継続可能な再生計画」に基づくべきだと考えます。

 

「既存不適格の建物」の存在

スルガ銀行の不正融資には、現在の建築基準法に適合しない「既存不適格建築物」が一定の割合で存在します。建物に相当な知識がなければ、これに気づくことはありません。このような建物は、売りたくても売れない。時には入居者募集すらできなくなります。建物調査をしなければ、わからない事項です。

 

「大規模修繕が必要な建物」がほとんど

スルガ銀行不正融資対象の多くの収益物件は、築30年経過しています。多くのマンションのトラブルは、築30年を超えたあたりから表面化します。「防水の劣化」「目地シールの劣化」「コンクリートのアルカリ化」「外壁タイルの剥落」「鉄部の錆の発生」「排水管の目詰まりと劣化」「給水設備の劣化」・・・・。きりがありません。建物検査をしなければわかりません。

これらの建物を放置した結果、入居者に被害を及ぼしたときの損害賠償責任は所有者にあります。管理者ではありません。

これらの大規模修繕再生には、数千万円から一億円を超える費用がかかります。

 

収支が黒字か赤字か

スルガ銀行は、「不正融資は認めても、収益物件の収支が黒字の場合は元本カットに応じない」としています。ところが黒字と赤字の基準は示していません。表面だけ捉えれば「家賃収入 ー返済元利」が黒字とも主張しているように考えられます。これでは、近い将来破綻してしまいます。

収益物件の収支は「家賃収入 ー 経営コストと将来リスク」と考える必要があります。「経営コストと将来リスク」には、日常管理費や固定資産税はもとより空室リスクや大規模修繕費が含まれます。私達の調査で作成した「事業再生計画」では、ほとんどの建物が10年以内に破綻すると思われます。

かねてより金融庁が指導している「事業再生計画」を基本とした解決には、まず「建物調査」を行い、「事業再生計画」を策定する必要があります。

 

清算条項の項

民事調停事件において、通常成立した調停調書の「本調停条項に定めるほか、本件に関し何らの債権債務の存在しないことを相互に確認する」旨の清算条項が入りますが、現在の情報としては、当該スルガ事案については、この清算条項を免除すると伝わってきています。つまり調停後さらに詳細な事実が判明したため、もしくは、締結後、事業運営が困難になった場合には、再度の調停が可能とされています。

その為にはベースとなる「事業再生計画」が不可欠となります。

 

積算法による元本カットでは破綻する

スルガ銀行は、元本カット金額の査定を積算法を採用する方向のようです。しかしこれで、持続可能な事業再生は可能でしょうか。土地価格は東京近郊と地方では根拠となる路線価に大きな違いがあります。建物の価格は、減価償却は勘案されますが、建物の劣化や将来の修繕費は見込まれていません。

大切なことは、不動産価値ではなく、事業経営の視点と考えます。

 

結論

法律の専門家は、法律の視点から調停を勧めています。私達はそれに加えて事業継続可能な解決が必要と考えています。

 

以上

2021年6月4日

スルガ銀行融資不動産被害者交流会(SYK)